ファミレスの老夫婦
とあるファミレスにて。
自席に座ると、目の前に老夫婦が座っていた。
以前もこの夫婦を見たことがある。
自分が座った席は違ったけれども、
老夫婦が座っていたのはその時も同じ。
きっと、指定席なのだろう。
少し眺めていると、
特段会話をするわけでもなく、
ただ飲み物を飲んでいる。
この2人の間には、どんな時間が流れているのだろうか。
想像するに、関係は良好なのだと思う。
いつも同じことを一緒にしているのだから。
それに長年一緒にいるから、会話などいらないのだろう。
そんなことを考えていたら、夫婦の帰り支度が始まっていた。
帰った後のテーブルに残るは、数個のカップだけ。
この夫婦のいた形跡が、ちょっと素敵でもあった。
あまりにも素敵で、それを少し眺めてしまっていた。
数分後、店員がやってくる。
仕事熱心で、数秒のうちにそのテーブルから夫婦の形跡が消えた。
残ったのは、いつも通りの空席。
そのテーブルは、老夫婦の指定席ではあっても専用席ではない。
この後も沢山の人が使うのだ。
だから、前の人の形跡など…残してはいけない。
当たり前のことなのだけど、なぜか切なくなった。
その後、自分も座っていた席を明け渡す。
次に使うだろう人のために。