好きだった部屋
ひとり暮らしの部屋を…今でも思い出す。
自分にとって、理想の部屋だった。
人を招くだけの広さがあったし、
自分の思想を隅々にまで浸透させることができた。
人生の中でも、ここまで「自由」を感じたことはなかった。
その一方で、「自由でいる」ということが
簡単なものではないことも学んだ。
ただのんびりと生活しているだけでは、
乱れるばかり…家のことも片付けなければならない。
部屋を見れば、その人の心が分かる。
よく言ったものだな…と、当時は改めて思った。
確かに、仕事でいっぱいいっぱいだったり、
体調を崩した時などは…部屋はメチャメチャだった。
今では他の人の家になっているその場所に、
戻りたいと思うことが…時々ある。
それだけ、あの部屋のことを愛していたのかもしれない。
窓から眺める夕暮れが好き。
一面だけオシャレな壁紙だったトイレが好き。
水が勢いよく出て水浸しになりやすい台所が好き。
友達と楽しく過ごしたリビングが好き。
引っ越しでちゃんと荷物は持ってきたけど、
そこにあった思い出までは持ち込めなかったのかも。
あの日々を思い出しながら、
また愛おしい部屋にするべく、
今の居場所を大切にする日々なのだった。