しつけ糸
ある日。エスカレーターに乗っていると…
目の前にカップルがいた。
いたって普通のカップルではあったが、
1点だけ気になる箇所を見つけた。
男性のコート…しつけ糸が付いたままである。
デザインなのかも…いや、んなわけない。
コートの柄的にも飾りは充分なコートだ。
装飾なわけは絶対にない。
けれども、見つけたからといって…どうすればいいのか?
オッサンが指摘すれば…色々と面倒なことになるだろう。
まずは一緒にいる彼女に笑われるだろうし、
本人も恥ずかしくて、なんとも言えない時間を過ごすことだろう。
いや、その前に…どちらとも「しつけ糸って何??」という
リアクションかもしれない。
そうなれば、こっちが完璧に変なおじさんである。
こんなことを書いたのも、
自分自身が過去にしつけ糸で失敗したから。
あの時の恥ずかしさは…忘れない。
誰にも気づかれないうちに、彼が気づくことを祈るばかりだ。